2026.09.15 Tue
イデックスオート・ジャパン様
「所有」と「カーシェア」の間をつくる。 日本唯一のサブスク型カーシェアを構想から形に

株式会社イデックスオート・ジャパン様が2026年7月にリリースした、サブスクリプション型のカーシェアサービス「バジェットサブスクカーシェア」。「所有」と「カーシェア」の間に位置するこれまでにないサービスに、ラテラル・シンキングはiOS/Androidアプリ、Webアプリ、サーバーサイドの開発パートナーとして構想段階から参画しました。
本記事では、参考にできる前例のないサービスをどのように構想から形にしていったのか、事業を主導された松永様にお話を伺いました。ビジネスモデルの設計から特許取得、リリース後の反響まで、プロジェクトの舞台裏をご紹介します。
概要
クルマを「所有する」から「必要なときに利用する」へ。移動をめぐる価値観が変わりつつあるなか、株式会社イデックスオート・ジャパン様が新たに立ち上げたのが、サブスクリプション型のカーシェアサービス「バジェットサブスクカーシェア」です。
1つのステーションに配置した1台の車を、最大15名程度の会員で共同利用する。利用者は生活圏内のステーションを「マイステーション」として登録し、月額料金の範囲内であれば時間料金がかからずに何度でもクルマを使うことができ、使えば使うほどお得になります。また、会員数をあらかじめ絞ることで、従来のカーシェアで課題とされてきた「使いたいときに空いていない」という状況が起きにくく、駐車場代や税金といったマイカー所有の固定費もかかりません。「所有」と「カーシェア」の中間に位置する、これまでにない移動の選択肢です。
利用者同士がクルマの状態を評価し合う相互評価の仕組みは、特許を取得(特許第7749873号)。日本で唯一※の共同利用型サブスクリプションモデルとして、2026年7月より提供が始まりました。
ラテラル・シンキングは、iOS/Androidアプリ、Webアプリ、サーバーサイドの開発パートナーとして、構想段階からこのプロジェクトに参画し、システム開発から特許取得のサポートなど担当いたしました。参考にできる前例のないサービスだからこそ、システムの実装だけでなく、ビジネスルールの設計そのものをイデックスオート・ジャパン様と共に考え、形にしていきました。
※イデックスオート・ジャパン様調べ(2026年6月時点)
サポート範囲
イデックスオート・ジャパン様とは、バジェットレンタカーの基幹システム、オンラインチェックインサービス、LINEミニアプリ予約システムなど、これまでも複数のプロジェクトをご一緒してきました。本プロジェクトでは、アプリからサーバーサイドまでを一貫して担当しています。
サービス分類
- 要件定義
- iOSアプリ開発
- Androidアプリ開発
- Webアプリ開発
- サーバーサイド開発
インタビュー
取材協力
「カーシェアの会社を一社増やすのではなく、時代・地域の住民に合った移動手段を提供したい」
松永様:
実は私自身、以前から「カーシェアは儲からない」と考えており、社内でも事業参入には反対派だったんです。イデックスグループ全体としても過去に何度も議論を重ねてきましたが、その度に「やらない」という結論が3回ほど出ていました。すでに大手各社が全国でサービスを展開している中で、私たちは明らかな後発組ですし、同じビジネスモデルでは差別化も難しい。当時の判断としては当然だったと思います。
嶋出:
それでもカーシェアを開始したきっかけは何ですか?
松永様:
事業参入できないと言いながらも、悔しかったんですよね、市場が伸びていくのを横で見ているのが。それで考えていたときに、「乗り放題のサービスがあったらいいな」と思ったんです。自宅の近くにいつでも使えるクルマがあって、月額を払えば時間を気にせず何度でも乗れる。ただし完全に自分だけのクルマではなく、限られたメンバーで1台を分け合う。
福井:
「所有」と「カーシェア」のちょうど間、というイメージでしょうか。
松永様:
まさにそうです。クルマを所有するほどのコストはかけたくない。でも、一般的なカーシェアよりはもう少し自分のクルマに近い感覚で使いたい。そのイメージを1台あたりの収益モデルに置き換えてみたら、これは黒字になるかもしれないと。そこから具体的に考え始めました。
後発だからこそ、既存のサービスを追いかけるのではなく違う価値をつくる。「カーシェアの会社をもう一社増やすのではなく、時代・地域の住民に合った移動手段を提供したい」そんな想いがスタートになっています。

正解のないサービスを、ビジネスモデルごと設計する
松永様:
システムをつくることそのものよりも、まだ世の中にないサービスの「正解」をつくることでした。参考にできる既存サービスも、「この通りにつくればいい」という完成形もありませんでしたから。
何時間までをサブスクの範囲にするのか。1台を何人で分け合えば快適に使えるのか。予約が特定の方に偏らないようにするにはどうするか。延長やキャンセルをどう設計するか。一つひとつ、ゼロから考える必要がありました。
嶋出:
1回あたりの予約時間をどうするかは、私たちも最初から最後まで議論し続けたところでした。固定にするか可変にするかで、かなり悩みましたよね。
松永様:
結果的に現在は、6時間固定にしましたが、ステーション毎に異なる料金、時間、定員数を自由に設定できる仕様にしたんですよね。あれは正解だったと思っています。しかもこの6時間という数字、業界では「カーシェアは6時間の利用が多い」というデータがあるんですね。でもそれって、大手さんが6時間パックを用意しているから、そこに需要が寄っているだけなんですよ。7時間のパックがあれば7時間が多くなるはずで、お客様の本当の利用シーンとは違う。
事業として成立することと、お客様にとって使いやすいこと。運営側に都合のいい仕組みでは使ってもらえませんし、逆に自由度を上げすぎると、1台を共有するというモデル自体が崩れてしまう。このバランスをどこに置くかが一番時間をかけたところです。
しかも、一つ決めても「このケースではどうするのか」と別のケースが見つかる。その繰り返しでした。開発というより、ビジネスモデルとシステムを同時につくっていた感覚に近いですね。
嶋出:
私たちとしても、仕様をいただいてつくるという一般的な進め方ではないところが難しいところでした。
松永様:
そうですね。かなり深いところまでサービス設計に入っていただきました。「この仕様だと、こういうケースが発生しませんか」と指摘をいただいて、そこからビジネスルールそのものを考え直したことも何度もあります。
予約の空き状況をどう見せるかも、要件定義の最初から「可視化したい」と話していたところでしたね。結果的に、1か月分の空き状況が丸・三角・バツで一目で分かる形になりました。他社さんだと15分刻みの24時間表をずっと追っていかないといけない。あの見せ方は他にないと思います。

特許は「取るため」ではなく、課題を解決した結果
松永様:
実は、料金設定や販売方法といったビジネスモデルそのものでは権利化が難しいと、特許事務所から案内がありまして。一方で、世に出す以上は「日本で唯一のモデルである」という独自性をきちんと形にして伝えたい、という思いもありました。
福井:
そこから、どうやって今の仕組みにたどり着いたのですか。
松永様:
改めてカーシェアが抱える課題に目を向けたんです。利用される方にとって、給油の状態、車内の清潔さなどは気になる点です。1台を共有するからこそ生まれる問題ですよね。通常は運営会社側で管理する領域ですが、「限られたメンバーで使う」という私たちのサービスの特徴を生かせば解決できるんじゃないかと。そこから、前の利用者の状態を利用者同士で評価し、蓄積・共有する仕組みを考えました。
福井:
難しかったのは、単なる評価機能で終わらせない部分でしたよね。
松永様:
そこが一番です。実際の運営課題の解決につながる仕組みとして、システム上どう成立させるか。評価のタイミング、項目、結果の反映方法まで、実際に使えるところまで落とし込んでいきました。
振り返ると、「特許を取るために機能をつくった」のではなく、「カーシェアのリアルな課題を解決しようと考え抜いた結果、それが独自の仕組みとなり、特許につながった」というのが一番近いと思います。
「できます」と言わない相手だから、本音で話せる
松永様:
もちろん他の選択肢もありました。ただ、技術力や開発コストだけを比較して決めたわけではありません。大きかったのは、これまで一緒にシステムをつくってきた実績と、その過程で積み重ねてきた信頼関係です。基幹システムやオンラインチェックイン、LINEミニアプリなどを一緒に開発してきましたから、私たちのビジネスや店舗のオペレーション、お客様の一連の流れまで理解していただいている。
福井:
ありがとうございます。ただ、それだけではないとも伺っていました。
松永様:
ええ、「これまでお願いしてきたから今回も」ではないんです。必要だったのは、決められたものをそのままつくる会社ではなく、構想やビジネスモデルを理解して「実現するにはシステムとしてどう設計すべきか」を一緒に考えてくれるパートナーでした。
これまでも、要望に対して「できます・できません」で答えるのではなく、背景や目的まで踏まえて「それなら、こうした方がいいのではないか」と提案していただく場面が何度もありましたから。
嶋出:
辛口でも構いませんので、正直なところも伺えればと思うのですが。
松永様:
そうですね(笑)。ずっと順風満帆だったわけではありません。こちらが求めるスピード感と開発側のスピード感が合わなかったり、意図が十分に伝わっていなかったり、「そこはもう一歩踏み込んで提案してほしい」と感じる場面もありました。お互いに言いたいことはかなり言いましたし、厳しい話をしたこともあります。開発会社からすると、かなり大変なクライアントだったと思いますよ(笑)。
嶋出:
それでも関係が続いてきた理由は、どこにあるとお考えですか。
松永様:
一緒に新しいものをつくっていて、何も問題が起きない方が不自然だと思うんです。大切なのは、問題が起きたときに「発注者」と「ベンダー」の関係に戻るのではなく、同じゴールを目指すチームとして本音で話せるかどうか。
良いパートナーというのは、何でも「できます」と言ってくれる会社ではないと思っています。同じ方向を見ているからこそ、必要なときにはお互いに「それは違う」と言える。そういう関係になれたことは大きいですね。

届けたかった価値が、お客様の日常になる瞬間
松永様:
業界やメディアからの反響は、正直、想像していた以上でした。ただ、一番印象に残っているのはお客様からの1本の電話なんです。
嶋出:
どんな内容だったんでしょう。
松永様:
「チャイルドシートは借りられますか」という問い合わせでした。転勤で福岡に来られていて、小さなお子さんがいる。クルマは持っていないけれど、子どもと一緒にいろいろなところへ連れて行って、思い出をつくりたい。でも所有するほどではない。そんなときにこのサービスが始まったので入会した、と。
車内に常設することも考えたのですが、取り付けの確認が必要になりますし、他のお客様への影響もある。それで、持ち運びできるタイプのチャイルドシートをご提案したんです。そうしたら、そのお客様から「このサービスが成功することを祈っています」と言っていただいて。あれは本当に嬉しかったですね。今も土日も平日もよく使ってくださっています。
福井:
まさに届けたかった価値そのものですね。
松永様:
私たちが目指していたのは、日常の中で気軽に何度でもクルマを使えるという新しい利用スタイルです。何十回という利用履歴を見ると、単に回数が多いというだけでなく、自分たちが考えていた使い方を本当にお客様がしてくれていると実感できる。「つくってよかったな」と思えるのは、その瞬間です。
松永様:
サービスはリリースがゴールではありません。実際に使っていただくことで、開発段階では想像できなかった使われ方や課題も出てきます。本当の意味で力が試されるのは、むしろここからかもしれませんね(笑)。
これからもこちらから厳しいことを言うと思いますし、逆に「それは違うんじゃないですか」と遠慮なく言ってほしい。「システムを完成させる関係」から「サービスを成長させる関係」へ。そこまで一緒に走っていければと思っています。
そして、バジェットサブスクカーシェアという一つのサービスにとどまらず、もっと大きな視点で、世の中の役に立つモビリティ事業を一緒につくっていきたいですね。
プロダクト紹介




バジェットサブスクカーシェア
会員登録から支払い方法の登録、ステーション情報の表示、予約、クルマの解錠・返却、利用明細の確認まで、すべて専用アプリで完結します。
利用者同士が前の利用者の車内の清潔状態や給油状態を評価し合う「相互評価制度」(特許取得済)を搭載。1台を共同利用するサービスならではの仕組みとして、車両の品質維持につなげています。
公式サイト
https://www.share-budget.jp/
App Store
https://apps.apple.com/jp/app/id6756288322
Google Play
https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.sharebudget.carshare
インタビューにご協力いただいた方

バジェットレンタカーの基幹システム、オンラインチェックインサービス、LINEミニアプリ予約システムの企画・開発を担当。その後、バジェットサブスクカーシェアの立ち上げを構想段階から主導し、ビジネスモデルの設計からサービスリリース、リリース後の事業推進までを一貫して手がける。
インタビュアー
福井 正寿
ラテラル・シンキング株式会社
ITソリューション本部 第4システム部 リーダー
嶋出 梓
ラテラル・シンキング株式会社
ITソリューション本部 第4システム部 リーダー
ラテラル・シンキングは、エンジニアを募集しています
ラテラル・シンキングでは、勉強会やハンズオン、年に一度のプログラミングコンテストなど
技術力向上のための取り組みが盛んです。
ご興味のある方は、ぜひこちらの採用サイトをご覧ください。
https://recruit.lateral-t.co.jp/